ワイバーン(wyvernまたはwivern)は、架空の生物の名称。名はマムシを意味するViperからの派生として考えられている。翼を持つドラゴンの中で二本足のもの。飛龍と訳される場合もある。ワイヴァーン、ワイヴァンとも。中世の紋章の図柄としてよく登場するワイバーンは、もともと紋章学より誕生した生物である。当時、ドラゴンの紋章は王室の紋章であったため、ドラゴンに代わるものとして誕生した。ワイバーンの逸話や神話が無いのはこのためである。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用。

 
 
 

工場配管の改修 ― 水槽の水位制御をマイルドにしてみる

 

2008年1月3日

 

んにちは。まるほです。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

このホームページができて1年過ぎてしまいました。いろいろ書くつもりでいたのですが、あまり更新されていません。鋭意努力いたします。


て、今回は電子系の話からちょっとはずれて、建築系の話をしてみましょうか。工学には違いないのですが、建築(環境)工学の話です。


建物は「箱物」と言って、居住を考える上ではなくてはならないものですが、箱物だけでは暮らしてゆくことはできません。建物の中で快適に暮らしてゆくためのさまざまな設備が備わることで快適な居住空間が生まれることとなります。

 

住居の他に、このことは工場でも言えます。建物だけでは工場の役割を果たすことはできません。工場の中に機械をはじめとする設備が搬入され据付けられて、工場の役割を果たすことができます。

という訳で、コンピューターや電子工学系の話ばかりも飽きがくるでしょうから建物の快適性を維持するための設備修繕の話でもしましょう。これも私がやっている仕事のひとつです。

 

回の修繕はある物を作っている工場です。工場の中に大きな水槽があって、水槽は一定の割合で水量が減少するようになっています。水量が減少すると、補給水を追加して一定の水量を確保できるまで給水を続けるという工夫を凝らした施設です。

 

この施設につながっている給水管が水漏れすると言うので現場をチェックしましたところ、受水槽から圧力をかけて水を送水するポンプ廻りの配管がかなり傷んでいました。

普通に考えてこのような漏水の仕方はおかしいなと思いながら、工場の方にいろいろお話を伺うと、水槽設置の際に水量調整用として電磁弁を取り付け現在のような形で運用しているとおっしゃっていました。

 

確かに、設置されている電磁弁が閉まるとドンと言う音と共に配管が振動しています。


 

ポンプ廻りの配管

ポンプ廻りの配管写真。ちょっとピンボケですが、ご容赦ください。

これは受水槽に直結されているポンプとその配管です。

工事を施工する前の写真です。配管の継ぎ目から漏水していました。

また、応急修理を行っているので配管がガタガタになっていました。この配管をやり変えて欲しいとの依頼でした。

ポンプ吐出口の拡大部分

ポンプ吐出口と配管との接合部分。配管口径は50ミリで繋がっています。長年の振動でかなり激しく痛んでいました。

チェックしてみましたところ、ポンプそれ自体には異常は無かったです。

ういえば、電磁弁について説明することを忘れていましたね。電磁弁について説明しましょう。

電磁弁というのは給水栓のひとつで、電気の力で栓の弁体を上げ下げすることで水を流したり止めたりする事ができるバルブです。給水栓の上にコイルが巻かれていてコイルの電磁誘導作用とスプリングにより電気の力を機械的な力に変換します。

電磁弁の概観

例示的な写真になってしまいますが、これが電磁弁です。配管をつなぐネジ部分が下部にあります。また、弁体を制御する制御部分が上部にあります。

だいたい、どこのメーカーでもこのような形の電磁弁を販売しています。

電磁弁上部の可動体

弁体を制御する制御部分の詳細な図面を載せてみました。

プランジャという鉄芯に銅線のコイル(ソレノイド)が巻かれています。このコイルの電磁誘導作用で弁座を上げ下げします。

 

回の施設で電磁弁操作をするうえで問題になっているのは、メインの配管に近い部分に取り付けられているので、電磁弁が動いたときに水撃(ウォーターハンマ)が発生することです。

 

ウォーターハンマとは配管内の水を急激に止めると止めた上流側ポンプ廻りの圧力が異常に上昇して、上昇圧力が衝撃波となってその点と給水源との間を往復し次第に減衰する現象を言います。


簡単に言えば、配管内の圧力が衝撃波のような機械的な力に変換されてしまう現象とも言えます。配管内で機械的な衝撃が突然、発生する訳ですから、この衝撃を配管などの機器類が受け止める事となります。

その結果、ウォーターハンマは配管・機器類を振動させ衝撃音を発生させたりすることとなり、この繰り返しにより設備が損傷する原因を作ってしまう現象です。

 

ォーターハンマがどのような力かを理解する簡単な実験があります。

 

まず、ビール瓶を用意してビール瓶に水をこぼれるまでなみなみと注ぎます。つぎに、十円玉を瓶の口に置いて十円玉と水の間には空気の層が無いようにします。そして、濡れてもいいような場所でビール瓶を持って、こぶしで十円玉の部分をそれなりの力でコンとたたくと、瓶の底がスポンときれいに抜けてします。

 

この実験でわかる事は、一度水撃が発生すると配管内のすべてに同じ衝撃が均等に加わる結果、衝撃にいちばん弱い部分から破壊されていくことを示しています。

 

ビール瓶のいちばん弱い部分は瓶の底であり、配管経路でいうならば配管同士をつなぎとめている継手やポンプ廻り配管が弱く破壊されやすい部分であるといえるでしょう。

 

 

 

磁弁が配管や設備を破壊する原因になっていることは現場調査で見た状態でわかるのですが、工場の中にはどうしても必要な施設である事から電磁弁を撤去することはできないと工場の方はおっしゃいました。

それでは、どうするか。電磁弁に変わる衝撃を発生させにくい給水栓を取り付ければいいのではないか、と考えました。それが電動弁です。

 

「電動弁」と「電磁弁」。文字ヅラはとてもよく似ていますが、作動原理はまったく異なります。

「電磁弁」はソレノイドと呼ばれるコイルの中にプランジャと呼ばれる可動鉄片があり、その動きによってバルブを開閉するという、比較的簡単な原理で動作します。

最大の特徴は、高速応答が可能なことで数10〜数100ms(msはミリセカンド。千分の1秒です。)で動作します。動作原理から考えると全開か全閉しかない、いわゆるON−OFFタイプの弁になります。

 

これに対して、「電動弁」は付属のモーターの力により徐々にバルブを開放するバルブです。
電磁弁よりも構造が複雑で、さまざまな原理があり統一はされていないようです。

特徴は、バルブをゆっくり開けたり閉じたりできることで電磁弁の長所である「高速応答性」とは対極にあるファクターを持つバルブです。このバルブを使うとウォーターハンマを防止することができます。

 

 

動弁を使って装置の制御概念図を書いてみました。それがこれですが、この図面の意味するところは、既存にある電磁弁を撤去して、電動弁に交換し制御盤を新設します。さらに、水槽の電極制御を行い電動弁の開閉を制御するものです。

図面にある制御項目を見ていただくとわかるのですが、電磁弁と比較して電動弁の場合は水位と時間のグラフ線に「カド」がありませんよね。「カド」がないということは、高速応答性が無いと言うことであり、ウォーターハンマによる衝撃波がないということです。

 

体の骨格があがりましたので、これを元に概算の見積を作ってみるのですが、修繕の領域を超えてしまい、工事価格の合計が大変なものになってしまうんですよね。

これをそのまま作ってしまうと、百万単位の施工金額になってしまうと思います。


ぜかって?その理由は、施工工種が多すぎることが原因です。

建築物の施工に当たっていえる事なのですが、建物の修繕は施工の工種が多くなると必然的に工事価格が上昇します。

建設業にはたくさんの工種があり、ひとつまたは数種類の工種を専門にしている下請けがたくさんあります。施工者はそれらの下請けを選別して施工させるのですが、専門性が高くなるほど高価になります。それら下請け業者の経費が乗ってきますからね。


今回の修繕見積でもざっと見て撤去工、電工、配管工、保温工など大まかに4工種ありますし、制御系の電工は電工でも特殊な部類になりますので、通常の電工よりも高価です。

 

額が高くなると、施主さんは施工に二の足を踏みますので価格を何とかして低く設定することができないかを次に考えてみます。いわゆる、「バリュー・エンジニアリング(Value Engineering)」というやつです。


まず、多い工種をできる限り1つまたは2つの工種でできるような工事にするべきでしょう。そのようにすれば、工事の費用が大幅に下がります。それと、短い工期で修繕を済ませることのできるような工法でなくてはならないとも考えることができます。


そこで、工法を根本的に考え直して電動弁を使うことなく1工種のみで施工することを軸に考え直しますと、代替案をひねくり出すことができます。以下のような主旨を元に見積りを修正してみることにしました。

 

  1. 電気工事は行うことなく、配管工事のみで修繕を完了させることができるようにする。
  2. 配管工事のみでウォーターハンマを解消するにはウォーターハンマ防止器を配管経路に取り付ける。また、ポンプ廻りへの衝撃に耐久性を持たせる為にライニング鋼管で施工する。また、フレキシブル・ジョイントを取り付けて振動の抑制対策を行う。
  3. 撤去工事を行うと工期が延びるので、行わないようにする。

 

1から順に説明してゆきましょう。


1は先ほど述べたような理由で、材料代と工賃を極力抑えるために配管工事を主体とした工法をとる事にします。配管工事のみで施工することで価格を抑えることができます。

 

2のウォーターハンマ防止器とは先ほど述べウォーターハンマの衝撃を緩和する装置で、装置内にベローズと言う緩衝用の伸縮チューブが入っています。


また、ライニング鋼管とは、管の内部にビニールでコートした鉄管でビニール管の錆に強いという特性と、鉄管の曲がりにくい特性を合わせ持った性質を有する管をいいます。


フレキシブル・ジョイントとはゴムで出来た「たわみ(可撓(かとう)性という)」がある継手のことで、配管のオフセット(偏差)を取ることが出来ると同時に、配管から発生する衝撃を吸収することが出来ます。

 

3は工期が短くすればするだけ、施主の負担が小さくなることを意味しています。工期が長いということは施工を行う職人の、のべ人数が多くなりますので、それを防ぐという意味です。

 

リュー・エンジニアリングを行うと、百数十万の費用がかかる工事が、数十万の工事で済むようになります。いろいろな方向から検討してみると金額は案外、下がるものです。ただし、エンジニアリングに発想の柔軟性が求められるのも事実ですけどね。

 

 

のような形で見積もりを作成し、施主の了解を取り付けて施工を開始するのですが、具体的な施工に当たってある程度の形を決めておく必要があります。

材料取りを行うのに必要な図面作成をする必要があります。私が作った図面はこちらです。ある程度の形にしてしまうと、材料取りが楽になります。

 

前にも書いたことですが、物を作るのに際して、ある程度の方向性が無いままで行き当たりばったりで施工突入すると材料や工程に無駄が多くなります。

その結果、材料の再調達や工具の調達に向かわなくてはならず、時間のロスが発生します。出来る限り時間のロスは無くしてゆくべきですので、施工前に必要材料や工具を徹底的に検討しておきます。

そうすることで、再調達にかかる時間を抑え、施工時間を短縮することができます。

 

よく、施主様方に私共の施工時間が非常に短いと言われます。そのように見えるのかもしれませんが、短いように工夫するための検討時間をかなり掛けています。この事は重要で、施工内容を相当検討した上での結果とお考え下さればいいと思います。

 

際の施工を行いましたところ、保温も入れて2日で完了させました。システム自体の調整は工場内部の稼動を見ながらチェックしましたが、いいように稼動しています。

ポンプにかかるウォーターハンマや衝撃を吸収しています。

 

ポンプ配管廻りを撮影。水色の管がライニング鋼管です。今回はビニル配管(黒色の配管)と併用しました。

バルブはディスクバルブです。このバルブはゲートバルブと違い、流量を調整できます。とても高価なバルブです。

2本立ち上がっているちくわみたいなのが、ウォーターハンマ防止器です。この中で配管内部の衝撃を緩和しています。

ポンプの吐出口を撮影。この部分がいちばん強度的な問題がありましたので直接にライニング鋼管でねじ込みました。

配管と配管の間に白い「ひも」のようなものが見えますが、これはシールテープというもので、ネジの間に入れて締めこむことで漏水を防ぎます。この方法は高圧配管の施工に用いられます。このあたりは水圧変動が大きいのであえてこのような形をとりました。

 

物の設備は用途に応じた稼動を行わなくてはいけないのですが、外因を初めとするさまざまな要素が絡みながら不具合が発生します。

不具合発生の原因を突き止め、対策を行うのが私共の仕事のひとつです。

 

 

 

 

 

 

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