自動車を修理してみた |
2008年1月28日
やあ、どーも。まるほです。
ぜんぜん更新してませんね。日常のネタには事欠かないのですが、筆不精なのは困りものです。書こうという気が起きないんですよね。もう開き直っていますよ。それに、通常業務もありますしね。結構楽しみにしてくださる方々もいるようなので、今回は少し多めに書こうと思います。
さて、日常で使うさまざまなものを大概は自分で修繕してしまうのですが、私自身、あえて避けてきたものがあります。それは自動車です。自分でもなぜ避けてきたのかわからないのですが、自動車の故障については必ずといっていいほど修理屋さんに持っていっていました。
ちなみに、私の乗っている自動車はホンダのステップワゴン初期型です。走行距離が10万キロと結構使い込んでいるので、故障が多発する頃だとは思っていました。 |
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私が使っているステップワゴンです。初期型のものを永いこと使っています。
まだまだ走れると思うのですが、時々故障して私を悩ませてくれます。 |
今回、自動車の車検がありまして、その際にラジエーターの一部にクラックが走っているとの指摘を受けました。ただ、車検を通すのには支障のない程度のものだったので、車検終了後に乗り回していると、ボンネットから軽く白煙があがっているのを目に付く事が多くなってきました。
ボンネットの中を見てみると、ラジエーターのクーラント(冷却液の事です)が早い頻度で減っているように感じました。さすがに、いつエンジンがオーバーヒートして壊れてしまうのではないかと心配になる上、ボンネットからシューシューと白煙が昇るような状態で運転しているのは精神衛生上あまりよろしくないと思われましたので、修繕する事にしました。
そして、いつも自動車修理や車検を依頼しているSAB社のI氏にラジエーターの交換見積を依頼すると、交換の材料工賃込みで3−4万くらい掛かるとの事。結構な金額です。車検の支出が今回は掛かったので、できる限り支出を抑えてしまいたいところ。
どーするか?さて、困ったぞ。
あれこれと悩んでいると、I氏が提案してくれました。
(い)「カネが掛からない方法があるぞ。割れてる部分の補修をしてみたらどうだ。」
(ほ)「そういう補修用の材料や工具があるのかい?」
I氏は店内から、
(い)「こういうのはどーだ?」
見せてくれたのはクラック補修用の耐熱エポキシパテです。260度くらいまでなら十分、耐熱性に優れるシロモノです。これを使ってクラックを補修すればいい訳か・・・。
(い)「ただ、これで完全に塞ぐ事ができるかどうかが疑問だけれど、液漏れが少なくはなると思う。」
(ほ)「わかった、やってみる。」
このような感じで、I氏からエポキシパテを購入してラジエーターのクラック部分を補修してみました。
下のような写真ですが、実はエポキシを使った液体の漏れ補修は案外しっかり補修しないと簡単に漏れてしまいますから注意が必要です。
まず、クラック部分に力を入れて樹脂を押し込む事。押し込まないとパテの効力が半減します。
次に、表面を薄く延ばしてエポキシ樹脂を材料面となじませる事。なじませると隙間がなくなり漏れなくなります。
そして、エポキシ樹脂は重ね塗りができません。一度エポキシ樹脂をコートした面にさらに重ね塗りをしても一度目のエポキシ樹脂表面には薄い皮膜ができており、2度目に塗ったエポキシのコート面が簡単に剥がれてしまいます。
言い換えると、エポキシの補修は一発勝負で決めなくてはいけません。一度、失敗すると塗布したエポキシ樹脂を完全にはがしてもう一度やり直すという実に面倒な作業を行う必要があります。
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ステップワゴンのボンネットを開けての撮影。ラジエータ上面にクラックのあることがわかりました。チョークで線引きしている部分がクラック箇所です。
ラジエータのクーラントがにじんでいるのもはっきりわかります。 |
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補修で使ってみたエポキシ樹脂のパテです。
通常のエポキシ樹脂パテは耐熱温度160−190度、硬化時間2時間ほどのものですが、このパテは耐熱温度260度、硬化時間1時間の速効性のものです。 |

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パテの切断断面を見たところです。ねずみ色の部分と黒色の部分を混ぜてやると硬化が開始するのですが、エポキシ樹脂は硬化開始と同時にガスが発生するので密閉空間で作業を行わないよう注意が必要です。
特に、速効性のものはガスの発生量が多く気をつけなくてはいけません。 |
実際に私がやってみました。かなり慎重にやったつもりでしたが、ダメでした。
ラジエーター内部は1キロ(0.098MPa)ほどの圧力が掛かっているので、エポキシ樹脂がちゃんとクラックの中に入りませんでした。クラック部分からクーラントが漏れている事を確認できます。
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エポキシ樹脂にて補修して硬化完了後にエンジンをまわして様子を見ていると、少しづつクーラントが漏れてきました。
クラックの内部にエポキシ樹脂が十分に入りきらなかったようです。
また、補修時に樹脂に付いた水分が多かった事が原因かもしれません。
あー、失敗だぁ。 |
これは、ラジエーター交換決定だな。
うわー鬱だ。カネねーぞ。
仕方がない、I氏にこう聞いてみました。
(ほ)「ラジエーターって自分で交換できるかな?」
I氏は、しばらく考えた後、
(い)「・・・できると思う。自動車も基本的にはプラモデルと同じようなものと考えればいい。忍耐と根性で乗り切ることは可能だ。やってみるかい?」
(ほ)「うーん、嫌だけどがんばる。下手(へた)打ったら面倒見てくれよ。」
(い)「・・・。」
おいおい、何だその沈黙は(笑)。
ああ、そうか。心の声が聞こえてきました。
I氏の心の声「おうよ。まかせとけ。いつでも言ってくれればすぐさま駆けつけるぜ、HAHAHA!」
と勝手に脳内変換しておきます。
まず、作業の前提としての情報収集です。情報の蓄積がないと具体的な作業の方法を検討できませんし、作業に失敗すると自動車がオシャカになってしまいます。そうならない為にも、情報の集積はかなり詳細にやっておく必要があると思います。また、私にとって自動車は今まで避けてきていた分野ですから、いろいろ見ておく必要もあります。
でも、自動車について学ぶいい機会かなーとも思います。今までチャレンジしてこなかった分野ですし、自分の乗っている自動車の整備くらいはできてもいいんじゃないかな、とも思います。
この「金融危機」と言われ、お金のないご時勢に業者に仕事を依頼すればお金が掛かるわけですから、お金を節約すると言う意味では自分でできることはできる限り自分でやる、イギリスのカントリー・ジェントルマンみたいな事を言っていますが、大事な事だと思います。
I氏にいろいろ聞いたり、ネットで検索してみたりしてさまざまな情報の分析を行っていくとわかってくることがたくさんあります。私の乗っているステップワゴンの初期型のラジエーターは経年変化で壊れやすいものである事や、ネット・オークションでラジエーターの新品が販売されている事などがわかってきました。また、修繕にどの部分に気をつけるべきか、試運転・調整の具体的方法などをチェックしていきました。
さて、ラジエーター本体の購入ですが例のごとくネット・オークションで買う事にしました。
純正品にしようか、互換品にしようかと言う判断ですが、この場合は互換品のほうがいいと思います。ステップワゴンの純正品ラジエーターは、情報によるとあまり丈夫なものではないようです、いろいろなところでトラブルが起きたりしているようですから、互換品で、かつそれらのトラブルをクリアしていると明記されているパーツを選定して購入します。
また、中古品か新品かの判断ですが、ラジエーターに関しては新品のほうがいいでしょう。
熱交換する為のフィン(下図、アルミ製で@の部分の事。)が中古品では汚れていたり、変形していたりいる可能性があります。
また、中古品は既に配管内部に冷却液が通っている為、前の使用者が使っていた場所の水質によっては冷却液内に入っている防錆剤のリン酸塩と水中のカルシウム分が結合し、リン酸カルシウムが析出している可能性が考えられます。
この物質がクセモノで、配管内部に沈着すると冷却効果が落ちますし、冷却管の管内を閉塞させます。せっかく交換するのですし、熱交換の効率を考えるなら新品のほうがいいと思います。
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今回使う新しいラジエーターの姿図です。エンジンの冷却水出入り口として32ミリ、オイルクーラー用の熱源取得用出入り口として10ミリの配管が出ています。
基部は鋳鉄、その他の部分は黄銅とアルミ、プラスチックを多用して製作されています。
@の部分がフィンです。 |
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@の部分を拡大して撮影しました。アルミニウムを使った熱交換を行っています。これらの部品を総合してフィンというのですが、やはり新しいものはきれいですね。
下の古いものと比較してくださればわかると思いますが、永い間使用しているとフィンの間に埃が詰まり熱交換の効率を下げてしまいます。 |
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古いフィンです。
埃が結構詰まっています。 |
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新しいラジエーターをネット・オークションで購入しました。こんな感じで送られてきました。
余りメーカーの事はよくわからないのですが、ここって有名どころなんですかね? |
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梱包をばらしたところ。 |
では、ステップワゴンを分解です。
バンパーや給気口をはずすのですがどこをどうすればいいのかずいぶん悩みました。
今回の修繕でいちばん難しかったのは実はこの分解でした。どんな製品でもそうなんですが、分解って芸術的なセンスが要求されると思います。この部分をはずしたらどうなるかといった予測を立てながらネジやクリップ類をはずしていくのですが、隠しネジや見えない部分にある部品を引っ掛ける為のツメなどが沢山有り苦労させられました。それでも、何とか分解することができました。
この作業にいちばん時間がかかりましたね。下手に力を入れると部品が壊れてしまうので修理しているのか破壊しているのかわからなくなってしまいます。
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バンパー周りを分解してラジエーターを交換しやすい状態に持っていきます。
ステップワゴンは車高が高い割にはタイヤ接地部分から裏面までの高さが余り無いので、分解しないと配管をはずす事ができませんし、ラジエータ交換もできません。 |
ラジエーター本体のクーラントを抜き取り、その後にラジエーター本体を交換します。
交換に際してエンジン部に往き返り32ミリの冷却水ゴムホースとオイルクーラーの熱源用チューブ往き返り10ミリのチューブを引き抜きます。
抜く時にゴムホースの劣化がないかどうかを確認しましたが、劣化は無いようです。劣化があれば耐熱・耐オイル用ゴムチューブを用意しなくてはならなかったのですが、あらかじめ目視にて劣化の程度を確認していたのでその必要はないと思っていました。
10ミリのオイルクーラー熱源配管チューブを抜いた時に熱媒用のオイルがどろっと出てきましたので、配管の抜き口に何らかの栓をしなくてはいけません。あまり気の効いたものは無かったので、荒っぽい方法ですが六角レンチの10ミリ程度のものを差し込んで蓋にしました。これでオイルが漏れる事は無くなります。
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クーラントを抜く為のドレン口です。ここのネジを開けて中にあるクーラントを抜き取ります。
抜き取り量は2−3リットルくらいではないかと思います。計測はしていませんが、私の場合では2リットルくらいの溶液が出てきました。 |
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クーラントの補給口とエンジンの冷却口です。 |
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黄銅でできている部分がオイルヒーターに接続する口金部分です。 |
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既設のラジエーター配管をはずした時にオイルクーラーの配管からオイルが漏れ出しますので、それを止める為に10ミリくらいの六角レンチを差し込みます。
このオイルは分子量が大きく、粘度が高い為、比較的簡単に漏れは止まるはずです。オイルの漏れが止まればどんなものでもいいと思います。 |
ラジエーター本体を交換して、配管が適切にバインドされているかを確認し、クーラントを入れます。
クーラントについてですが、写真でもお分かりの通りエメラルドグリーンの実に怪しげな液体ですね。ドラ○エのスライムみたいな色しています。MSDS(Material Safety Data Sheet,特定の化学物質、および化学物質を含んだ製品を他の事業者に出荷する際に添付するその化学物質についての情報を記載したシートのこと。通称、製品安全データシートという。)を取り寄せて眺めてみると、クーラントの主成分はエチレングリコールです。
実は、この溶液「甘い」んですよ。どうして味を知ってるかって?そりゃ、車体の下に入って作業してれば顔にかかりますよ。ポトポトとしずくが落ちてくるんです。たまたま、唇に当たってなめた時に甘い事を知りました。
そういえば、今から25年位前のことです。ワインに「ジ」エチレングリコールを混入する事で安物のワインにまろやかさを与えて販売するトチ狂った業者がいて問題になったことがありました。この場合はエチレングリコールではなく「ジ」エチレングリコールです。2つとも非常によく似ている物質ではあります。
ジエチレングリコールもアルコールの一種ですから、酒じゃないかと考えることもできますが、中毒毒性については半端じゃないのでやるべきではないでしょう。やれば死にますよ。
2つの物質の相違点について、化学式で説明すると簡単なことなのですが、ジエチレングリコールは二つのエチレングリコールをくっつけたような形をしています。現在でも、ジエチレングリコールは合成樹脂の原料や不凍液として使われています。
さて、買ってきたクーラントは1瓶の容量は1リットルですが水で2倍程度の希釈する必要があります。2つでおよそ4リットルの冷却液が作れる事になります。
ちなみに、ステップワゴンの冷却サイクル内の液量の合計は6リットルですので、配管内部に残っている分を合わせて4リットルもあれば十分でしょう。
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購入したクーラント。色で等級が示されており、上位ランクは赤色だそうです。緑のクーラントの有効期間は2−3年ほど。赤のクーラントは5年程度持つようです。
濃度は、エチレングリコール:水=2:1が不凍液の効果としてベストの状態であるそうです。 |
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水で希釈した状態。希釈すると緑色がより綺麗に発色します。 |
十分な量のクーラントを入れたら、いよいよ試運転です。どんな機械でもそうですが、この段階がいちばん楽しくもあり、ストレスがかかりますね。
エンジンを回して、冷却水配管内部の空気を抜く必要があります。空気を抜く為には配管に流動サイクルを起こさなくてはなりません。また、泡となって冷却サイクルから空気が抜けると言う事はクーラントを補給しなくてはならないと言う事です。
I氏から試運転に関する方法を具体的に教えてもらっていたので、このようにしました。
まず、底をカッターナイフで切り込んだ空のペットボトルを用意してアダプターを差し込みます。このアダプターは冷却水サイクルの最上部にあるクーラント補給口と接続できるようになっています。下の写真にあるように接続します。
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ペットボトルとラジエータを接続する為のアダプター。ゴム製です。
ペットボトルに差し込んで下の写真のように繋いでやります。 |
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ペットボトルを取り付けて、試運転の準備OK! |
接続した状態で、エンジンを回すのですが、エンジンを回し始めて冷却液が温まってくるまで時間がかかります。
冷却水が暖かくなってくるとラジエーターに付いているファンが回り始め、冷却を開始します。その時に、冷却管内部の圧力が上昇しクーラント補給口に差し込んだペットボトルにクーラントが逆流してくる様子が観察できます。
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冷却水がまわり始めると管内の圧力が上がり、液面があがりはじめます。すると、ペットボトルにクーラントがあがってきます。
水温が高くなる為、クーラントから湯気が出てペットボトルの側壁をくもらせています。 |
クーラントの逆流と一緒に「ポコポコ」と中に入っていた空気も抜けていくのがわかります。案外、沢山空気が入っているようです。20分くらいエンジンを回し続けて空気を抜きます。また、空気が抜けていくと冷却液の液面がさがるので、ペットボトルの上から不足のクーラントを継ぎ足していきます。
それから、オイルクーラーの熱源オイルが完全にサイクルし始めない限り、暖房は効きません。オイルクーラーの熱媒はかなり粘度の高いオイルを使用しているのでラジエーターの内部にオイルが完全に回りきるまで時間がかかります。
私のステップワゴンの場合でしたら1時間ほどかかったように思います。時間はかかりますが、オイルが回れば暖房が効き始めるようになります。
こんな感じで、ラジエーターの交換が完了しましたが、このまま通常通りに使ってみてラジエーターの液面が下がっていなければ完了ですね。
それでは、元々付いていたラジエーターを検証してみましょう。写真を見てくださると判ると思うのですが、長手方向の軸線に平行してひびが入っているのがわかります。ネットでもこのような故障事例を沢山見る事ができましたし、I氏もステップワゴンのラジエーターの故障事例の典型だと言っていました。
材質について余り自信はありませんが、クラックを発生している箇所の材質はどうやらFRPのようですね。今回、交換した互換品ラジエーターは該当部分が炭素繊維のようなものをコンパウンドしたABS樹脂です。
また、ひびの入っている部分の裏側も見ましたら裏側にもひびが入っていました。やはり、ラジエーターの交換は正解だったようです。劣化が急速に進んで、エンジンのオーバーヒートに至るまでは時間の問題だったように思います。
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赤矢印の方向にひびが沢山入っています。クーラントの漏れ跡を見てもそのように推認できます。 |
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ひびの入っていたところの裏面を撮影したものです。
赤丸部分にもひびが入っているのがわかりますか。
やはり、ラジエーターの交換が正解だったようですね。 |
ラジエーターの交換を自分で実際にやってみた感想ですが、できたような、できなかったような、もっとこのようにやればよかったという反省点も沢山あるように思います。こんなものかな。
この寒空の中で地面に這いつくばりながら配管をばらしたり、接合したりしたおかげで、風邪を引きましたよ。
また、専用の施設があればもっと手早く簡単にできるだろうに、と思うのですが、これだけは無理ですね。大層になりすぎます。それと、接合用の治具も必要ですね。車両用に特化した工具は必要です。治具くらいは持っておいても損はないかなと思います。
PCでも土木構造物でも原子炉プラントでも直す自信はあるけど、自動車も勉強すれば面白いかもしれませんね。いい機会だから勉強し続けてみようかなー。そう思いました。
何はともあれ、的確な状況判断の下に最適の助言を下さったSAB社のI氏に御礼を申し上げます。
Thanks! Mr.I !
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