ワイバーン(wyvernまたはwivern)は、架空の生物の名称。名はマムシを意味するViperからの派生として考えられている。翼を持つドラゴンの中で二本足のもの。飛龍と訳される場合もある。ワイヴァーン、ワイヴァンとも。中世の紋章の図柄としてよく登場するワイバーンは、もともと紋章学より誕生した生物である。当時、ドラゴンの紋章は王室の紋章であったため、ドラゴンに代わるものとして誕生した。ワイバーンの逸話や神話が無いのはこのためである。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用。

 
 
 

デジタルアンプを作ってみる − <その1>構想・製作篇

 

平成20年4月26日

 

んにちは、まるほです。


めっきり春らしくなってきました。桜も咲いていますが、今年は雨が多いせいでしょうか。風情が無いような気がします。

ソメイヨシノの花は雨が降ると雨によって花が色落ちしてしまいます。ですから、雨が降ってしまうと花の盛りがすぐにすぎてしまうんです。

ソメイヨシノの花が見ることができない場合はヤエザクラに期待しましょう。ヤエザクラは花持ちが良い上、豪勢な花が多いですしね。

 

あまり関係のない事ですが、この季節になると西行法師の和歌を多く思い出します。西行法師は23歳で出家し奈良県吉野山の山桜をこよなく愛した歌人としても有名です。彼の隠棲趣味の和歌は寂寥感もあり、散る桜とよくマッチします。

 

吉野山 梢(こずえ)の花を見し日より 心は身にも 添はずなりにき

 

上のものは花(=桜)を詠ったもので有名な和歌のひとつです。

どうも横書きの文章には和歌はしっくり来ませんね。いつもこの季節になると吉野山に行きたいと思うのですが、今年も行けそうにありませんね。

5月の中旬ごろまで吉野山では遅咲きの桜が咲いていますので、行ける機会があるといいのですが・・・。

今がいちばんいい季節です。寒い冬は嫌いですが、暑いのも困りものです。もう3ヶ月もすれば暑くなります。季節の移ろいは桜の花と同じであっという間です。

 

回はアンプを作ってみようかと思います。当所に貧弱なパソコン用スピーカーが付いているプログラム評価用のPCがあるのですが、前から音声関連の増設を考えていました。パソコン用の付属アンプを付けて迫力あるサウンドを作ってみたいですね。

そこで、アンプと言っても真空管を使用したものからICチップを使用した最新式のものまであるのですが、私が以前から作りたいと思っていた本格的なデジタルアンプ(D級アンプとも言われるもの)を作ってみようと思います。

 

言葉のみが先行している感もありますが、工業製品や家電製品のデジタル化が進んでいます。デジタル化によって製品の軽量化が簡単に実現できたり、操作が便利になったりいろいろな点で今までのアナログ技術よりも便利かつ高性能であるかのような言葉で使われています。

「デジタル」と言う言葉を聴いて想像するものの中で、もっともデジタルらしいものといえばパソコンですよね。実は真空管やトランジスタでもコンピューターを作る事ができます。しかし、性能のそれほど良くないパソコンでもアナログ技術で作ろうとすると回路構成にビルのフロア1階分くらいのスペースが必要になるでしょうか。

 

デジタル技術は工業製品の軽量化に強力に貢献してきました。現在の技術はデジタル化という方向によって発達してきたといっても過言ではありません。

オーディオの世界も以前はレコードを主体としたアナログ技術によるものでしたが、コンパクトディスクによるデジタル化から始まってデジタル化により大きく変化しました。

オーディオアンプも同様で市場に販売されている製品も2000年ごろまではアナログアンプが主体だったようです。しかし、時代の流れにより増幅回路部をチップ化して小型化、軽量化が進むようになりました。

また、チップ化により省電力化が可能となり非常に強力で電力損失の少ない高効率アンプを作る事ができるようになりました。

現在、市場の趨勢はデジタルアンプを主体とした販売戦略が行われているようです。この文章を書くにあたってどんなメーカー製品があるのか、オンキョーのホームページを覗いてみましたが、アンプのカテゴリーはデジタルアンプの高効率、小型化を主体とした説明の文章で埋まっていました。やはり、今はデジタルアンプの時代なんでしょうかね。

 

の個人的な見解を述べますと、デジタルアンプでもいいと思うのですが、後でも述べるようにこの手のアンプはラジオや映像関係とあまり相性があまり良くないです。

 

実は、チップが駆動すると雑音(正確にはパルス波)が発生し、映像の信号線やラジオの増幅ラインに干渉します。それらを防御するシールドを作って防いでやればいいのですが、機器によってシールドの方法や調整の方法がいろいろあり、なかなかうまくいきません。デジタルアンプも一長一短がありますね。

 

それゆえに、マルチメディアを再生録音するようなシステムの基本構成はアナログアンプによるものがいいと思います。実際に、私の主要構成システムはアナログアンプです。大きいし、発熱もすごいですが、自分ではいいシステムだと思っています。

 

 

うちのシステム

プリメインアンプはサンスイ製のものです。グライコにヤマハのエフェクターを改造してオーディオ用にしたものと、自作のエフェクター(緑のもの)を併用しています。

緑のエフェクターはオーディオ用のOPアンプ4558という珍しいICチップが手に入ったので、勢いあまって作り上げてしまいました。

 

 

れでは、始めましょうか。まず、私が作ろうとしたのはトランジスタ技術と言う雑誌(以下、トラ技と言う)にあったデジタルアンプの付属基盤を使ったオーディオシステムの構築を考えました。

 

本屋で、何気なくトラ技の表紙を眺めていると記事に「高効率パワーアンプの作り方−D級アンプの製作」とあるじゃないですか。これを見て、ティンと来ました。ああ、これは俺に作れと言っているんだなぁ。

 

トランジスタ技術2008年3月号

トランジスタ技術2008年3月号にデジタルアンプの特集がありました。また、付録としてデジタルアンプ回路の基盤が付いていましたのでこれを流用してデジタルアンプを製作してみようかと思います。

むかし、学研とか漫画の付録として月毎にいろいろなオモチャがついていましたよね。

付録に釣られて、本を購入するというのはいかがなものかと自分でも思います。

だが、決して反省はしない。子供の頃と中身があまり変わっとらんのか、俺は(笑)。

 

 

じゃあ、部品はどんなモノが必要なんだろうかだと思いながら電材屋の番頭に聞いてみると、部品もセットで売っているぜとの事。見せてもらうとそのセットがやけに安い。D級アンプの心臓部であるチップも込みで千円ちょっと。このクラスのデバイスはチップ1個だといっても千円超えるはずなんですが・・・。

 

私は番頭に「何でこんなに安いんだ?」と聞くと、番頭いわくメーカーの好意で一定のロット数を破格の値段で納入してくれたとの事。だから、今限りの限定でお得なんだよと言われたので、それはめでたい事だと部品を2セット買ってきて作る事にしました。


未だにこういうサービスをしてくれるメーカーってあるんですね。すごい事だと思います。言い換えると、これはメーカーの自信のあらわれでもあります。製品に相当の自信を持っていないとできないことです。

しかも、相手はトラ技の読者ですよ。トラ技の読者は凄腕が沢山おり、そのような方達に提供するんですから。本当にいい度胸していますよ。こんな事を考えていると完成させるのが楽しみになりました。期待大ですね。

また、最初はアンプの設計からしようと思ってはいたのですが、自分での回路設計するのも面倒ですし、ある程度完成されていて、技術的な評価ができる素地のある回路を組み合わせて作ってみようとも考えていましたので、比較的容易にある程度の製作の方向性を考えることができました。

 

ういうアンプを作るか?明確なイメージを作っておきましょう。いつものごとく製作前の構想は重要です。構想をしっかりする事によって回り道を回避できますし、部品調達や技術検討を容易に行う事ができます。
私が考えた構想は以下のとおりです。

 

  1. 左右回路を独立させたステレオアンプである事。
  2. パソコンの補助アンプとするので出力は20ワットから40ワットくらいのものでいい。ハイパワー化はアンプを大きくする。
  3. 可能な限り、小型化する。ただし、小型化しても使い勝手は良くする。
  4. そこそこの性能を持たせる・・・。

 

 

うーん、こんなものかな。

項目4の「そこそこの性能」なんて何ともまあ抽象的(俗な言い方をすると「いいかげんにしか考えていないとも言う)ですが、これらの構想を元に具体的な回路を頭の中に描いてきます。


項目1は増幅回路を2系統、電源回路を2系統取ればいいと考えられますが、電源どうしようかと考えました。普通アナログアンプならトランスと言う部品を使って交流100ボルトを20ボルトとか30ボルトに降圧して直流に変えてしまいます。ただ、この増幅回路はトランスを使って電源供給をすると、ある状態(電源スイッチをON・OFFしたりするような状態)になると壊れる可能性が出てきます。

また、意地を張ってトランスを使って作るとなると、トランスは安定した電源供給のものを使う事になります。そうすると、どうしてもカサが大きく、重量のあるものを使うことになりますので、保護回路をつけたとしても大型化は避けられない。項目3に抵触する・・・。

 

し、スイッチング・レギュレーターを使ってみようと思いました。スイッチング・レギュレーターというのは小型の電源供給回路と思ってくれればいいです。

スイッチング・レギュレーターは軽く小さい上、熱もあまり発生しませんし安定した電源供給をしてくれる回路です。しかしながら電源供給のレスポンスがよいとはいえない上、デジタルアンプの動作原理と同じで、パルスを発生させるので音声信号のシールドをはじめとする多くの工夫を行う必要があります。オーディオの出力電源として使いますから、電源の質を良くしておく為の改造を行っておきます。


まあ、何を言っているのかという方もいらっしゃると思いますが、簡単に言えば回路を小型化すると構成に手間がかかり複雑化すると言う事です。

 

私はアンプについてはアナログのロジックに慣れているので、アンプの電源回路にスイッチング・レギュレーターを使うというのはすごく抵抗があります。

こんな事して大丈夫かなーと言うのが本音です。しかし、小型化が必要ですからやってみる価値はありそうな気もします。

 

 

スイッチングレギュレータ

これがスイッチング・レギュレーターの回路です。回路の構成は複雑ですが、軽く扱いやすくなっています。この回路の仕様は100ボルトを15ボルトの直流に変換します。最大電流出力値は2アンペアです。過電流出力を防止する為の機構も内蔵されており、非常に使いやすいですが、私はオーディオに使うのは初めてです。電流供給のレスポンスの悪さが仇にならないと良いのですが。

この回路も、少しですが熱が発生します。その解消方法としてアルミのヒートシンクが写真上部に配置されているのがわかると思います。結局、D級アンプと言っても回路構成から考えて、熱対策から逃れる事はできません。

スイッチングレギュレーターとトランスの比較

 

オーディオに使われるトランスとの比較。すごくデカイでしょう?カサと重量が段違いです。この重量級トランスを使って電源構成する方法をスイッチング方式に対してドロッパ方式と言います。

ドロッパ方式は大電流が流れた後の電源の回復が非常に早く、コンデンサと併用して脈流が置きにくい回路構成にすることができます。これに対して、スイッチング方式は電源の回復が遅く、必要電流が得る事ができなくなる可能性が発生します。

さて、今回はどうでしょうか。何事もやってみないとわかりませんからね。

 

た、使い勝手ですがインプットセレクターを取り付けて機器からの入力を2系統とし、アンプ回路裏面に100ボルト非連動のコンセントターミナルを2個付ける事にしましょう。スピーカーの出力端子は左右1系統ずつで合計4個。フレームのアースも取り付けます。


さらに、保護回路も取り付けます。発熱が少ないといっても夏場の温度上昇を考えればエアフロー対策も行っておく必要もありますね。

 

やはり、アンプの製作になると相当いろいろ考えなくてはならないようです。上に書いてある事項は最低限やっておかなくてはならない事項だと思います。そうでないと、使い勝手が良くなりません。

 

これらのたたき台を元に製作開始です。アルミのボックスを購入してマジックを使って、機器内部の配置を決めます。

 

とりあえず落書きしてみる

アルミボックスの筐体内部にマジックで書き込みながら、回路の配置を考えるのが私はいちばん楽しいです。実は収まりの取り方がここですべて決まってしまうので、変な配置にしようものなら後で大変な事になります。

さらに、絶対この場所しか付ける事ができないと考えられる部品については最優先で取り付けてしまいます。ここでは、ボリュームやセレクター、ファン、それに固定足です。

CPUファンを取り付け

CPUファンをここでは排気ファン・給気ファンとして流用しました。音響機器ですのでファンの騒音に悩まされないよう回転数を調整できるように回路構成します。

エアフロー対策は理想をいうと機器の対角線配置が最も良いといわれています。今回はそれに倣いました。

高価なボリュームおよそ豪華なディナーが食べれるくらい・・・

アンプのボリュームです。実は、このボリュームが今回使った部品の中でもっとも高価です。3200円の品物です。

別に安価な部品は沢山あるにもかかわらず、なぜ、このような高価な部品を買ったのか?ボリュームは電源スイッチ以上によく使う部品だからです。簡単に壊れるような事があってはならないという理由からです。

事実、安物のボリュームは簡単に壊れる上、ガリが多くすぐに壊れてしまいます。

特にこの部分において長持ちさせる秘訣としては、高価なものを買っておいたほうがいいです。

 

は、製品の製作工程において、この部分での作業がいちばん面白いんですよね。

何も入っていないアルミのボックスにマジックで書き込みするだけなんですが。アルミボックスにこの部分に回路を配置すると配線がうまくいくからこうして、ここにアルミ板でパネルを取り付けてといった内容をマジックで書き込みながら考えて行きます。

変更しようとすれば、アルコールでマジックを簡単に消す事ができますので、黒板に落書きを書くような感覚で作業をしていると言えばいいでしょうか。この作業は面白いし、楽しいです。

 

このような作業をして考えがまとまれば、後は作っていくだけですが、以降の作業は技術検討や計算といった地味な作業が続きます。

地味な作業について、それはそれで面白いのですが長々と続くものですし、根のつめた作業を行うので疲れる事も多いです。

 

うして製作していきます。基盤に部品を半田付けし、基盤ごとに回路の動作をチェックしていきます。動作チェックを行なっていく過程で部品の不良が見つける事ができますので、トラブルシューティングも兼ねて行っていきます。


今回は心臓部のICチップが不良品でした。入力電圧が一定しているのに、出力電圧が殆ど出ていない。おかしい。回路の構成を間違えたかと何回かチェックしても間違えていない。そこで、ICチップを交換してみると正常に動作しました。また、温度保護回路に使う感温器(サーミスタという)も調子がおかしかったのでチェックしてゆくと部品不良である事が判明しました。


文章で書くととても簡単に見つけられているような書き方になっていますが、不良部品についてのトラブルシューティングは膨大な時間がかかります。


なぜかって?トラブルの最初はどの部分が壊れているのかまったくわからないからです。現象面から考えると予想した挙動と異なる挙動を機械が取るので、何かおかしいという事は明確にわかります。

しかし、なぜ挙動がおかしいかを理解するためには回路を分けたり、現象から故障の予測を立てたりすることで故障原因の予測を細分化してゆき、その細分化された要素をひとつずつチェックしていく必要があるからです。


近世の哲学者、ルネ・デカルトという人が言った「困難は分割せよ。」これを地でいくわけです。

そうは言っても、全部の細分化された内容をチェックするまでも無く故障原因は見つかりますので少しの努力が無駄になる程度で済みます。

このトラブルつぶしがいちばん難しいですし、しんどいです。

新品で製作する時も、故障品を修繕する時も付きまとう問題なので工程の進捗にあわせてところどころにトラブルつぶしを入れておくと効果的にトラブルシューティングできますし、早く完成します。

 

D級アンプの心臓部

International Rectifire社(以下IR社)のIRS2092というデジタルオーディオアンプ素子。2007年の11月に発売されたようです。今回のD級アンプの心臓部にあたる部品です。

なかなか扱いの難しいデバイスだと思います。

出力段MOS-FET

同じくIR社のMOS-FET素子であるIRFIZ24NPbFです。前からMOS-FETの音を聴きたかったということもあり、このまま使いました。

この出力素子を交換する事で、よりパワーアップしたオーディオアンプを作る事ができます。ただし、パワーアップすると放熱対策は必要になるので部材と工程が増えますね。

部品温度の監視方法

IRFIZ24NPbFの後部にアルミ板を貼り付けて丸くなった部分にサーミスタ(温度計の一種)とシリコングリスを入れてこの素子の温度を常にチェックします。

温度が80度くらいにまで上がると自動的に回路がシャットダウンするようになっています。

IRFIZ24NPbFで撮影する前に既に基盤に据え付けてしまっていたので、同型のパッケージである2SC3851のトランジスターにモデルになってもらいました。

ちゃんときれいに配置しろよー!

万能基盤で右側の増幅回路を作りました。回路もきれいに作る事でちゃんとした性能が発揮するのにこれだもんなー。

自分で言うのもなんですが、もっと綺麗に作れよー、とひとりでツッコミを入れておきます。ある意味、恥さらしだ・・・。

 

リア部分の配置

アルミボックスの背面部分に使い勝手が良いようにいろいろと付けてみました。

スピーカー出力端子は当然として、ライン入力は2系統付けておきました。さらに、非連動の100ボルトコンセントも付けておけばここからプレイヤーの電源供給が可能になります。

本当はもっといろいろな機能付けたかったんですけども、スペース的にはこのあたりがギリギリだと思います。

 

れらの基盤を配線して、完成に持っていきましょう。配線は線が「輪(わ)」になら無いようにきれいに配線するのが基本です。写真を見ていただいてもお分かりのとおり、私の場合は決して「きれいに」はなりません。

 

私はいつも収まりで

失敗するん

ですよーっ!

 

品の配置がいいかげんだったり、配線が輪の状態だったりすると雑音や発振の原因になります。発振とは何ぞや?発振というのはイメージ的なもので言えばマイクのハウリング状態を想像してくださればいいと思います。


カラオケをする方はよくお分かりになると思いますが、カラオケマイクをスピーカーに近づけるとブーンという音が発生しますよね。あれも発振のひとつ(Positive Feed-Backとカッコいい専門用語で言ってみる)です。
あのハウリング状態みたいなものが配線を始めとするいろいろな原因が元でアンプの中で起きてしまいスピーカーから発振音が出てしまいます。


こうなると、アンプは使い物になりませんのでそうならないように工夫を行います。そのひとつが「輪」を作らないという事です。

 

に、エアフロー対策について説明しましょう。以前にもお話をする機会がありましたが、エアフローとは排熱対策の事で、機器内部で発生した熱を効率的に排出できるかどうかが機器の寿命を左右し電気機器には必ず施されます。


今回は何も無い状態から回路を組み立てて配置するので自分ですべて考えていかなくてはなりません。そこで、写真のように考えました。

 

 

エアフロー矢印図

矢印の方向が空気の流れの方向です。ファンは給気と排気をそれぞれ取り付けているので、強制換気により強力に熱を排気できます。

アルミニウムで仕切りを作っている為、排気が行いにくい状態ではありますが、対角線上にファンを設置しているので、効率的に排気が出来ています。

 

級アンプがいくら効率よく熱の発生が少なくなっているといっても電子機器であることに変わりはありません。また、スイッチング・レギュレーターも同様の理由で熱の発生が少ないですが、やはり使う電流値により多少の熱が発生します。


これらの主要回路のほかにも回路を増設していますので多少の熱は発生する事は考えなくてはなりません。


そこで、筐体中に2個の吸気・排気ファンを取り付け効果的な排熱を行う事ができるように工夫しました。
1個でも良かったのですが、内部の回路構成について考えると小型化を行うために結構、複雑になりそうな感じであった事や、アルミパネルによるパルス波の吸収対策を行う必要性があった事を考えると、静かに熱を排出するためには吸気と排気の両方が必要であるとの結論に達しました。

また、オーディオ機器ですから排熱ファンの音がブンブンと唸るのでは興ざめですから、ファン回転を調整する回路を設けて静かに熱の排出ができるようにしました。

 

さらに必要な事として、システムのフェールセーフ(FAIL-SAFE)も考えておきます。

フェールセーフとはシステム工学の用語で故障や操作ミス、設計上の不具合などの障害が発生することをあらかじめ想定し、起きた際の被害を最小限にとどめるような工夫をしておくという設計思想をいいます。
つまり、設計の際にすでに故障を前提に考えておかなくてはならないという事です。

 

どうしてそういうことをするのか?機械はいずれ壊れます。この事は宿命のようなものです。

壊れるのはいたし方の無い事としても壊れ方に問題があるような場合はその製品の設計に欠陥があるといわれても仕方が無い事になります。

このアンプで例えるなら、回路の一部分が壊れた場合にスピーカーや他のオーディオ機器に故障が拡大するような事があっては困るわけです。

それらを防止する工夫を現時点の製作時におこなっておきます。

 

回路の各所に過電流防止用のヒューズを入れておくのは当然として、アンプ回路には過温度防止回路とスピーカー保護の為の保護回路を入れておきます。

スピーカーの保護については重要な事ですので少し長く説明しておきます。オーディオの音質はスピーカーの良し悪しによって決まるといっても過言ではありません。ですから、高音質を追求するならオーディオ購入時におけるスピーカーの価格比率は相対的に上昇します。

いちばん故障すると困る機器ですね。はっきり言うなら、いいスピーカーは値段高いです。故障拡散防止については是非とも死守しなくてはいけないエリアです。

そこで、いろいろな回路上の工夫をおこなって、スピーカーが壊れないようにします。

スピーカーの故障で一番多いのは過大入力によるコイルの断線です。過大入力と言うのはスピーカーに通常入れてはならない電圧電流を入れてしまい、スピーカーをおしゃかにしてしまう事をいいます。

現に製作しているこのアンプでもおきる事です、直流15ボルト数アンペアの電流が何らかの故障でスピーカーに直接入る可能性は絶対無いとは言い切れません。

 

ういえば、以前音響メーカーの技術屋と話していたときに面白い話が聞けました。その音響メーカーは高級スピーカーを主体で作っています。

故障製品をメンテナンスしている部門にとんでもない故障品が運ばれてきました。スピーカーのコーン(丸く音の出る部分)は敗れバラバラになり、ネットワーク(スピーカーの駆動回路)は半分炭化しているありさまです。エンクロージャー(筐体の事)は煤にまみれており、このスピーカー、どこかの戦場の爆撃跡から拾ってきたんですか?と言うような状態だったそうです。

 

技術屋というのは難儀な生き物で、軽微な故障や想定できる範囲のものについて好奇心はあまり持ちません。淡々と修理します。しかし、この故障状態は常軌を逸しており、なんでこんな状況になったのか彼はどうしても聞きたくなったそうです。

そこで、持ち主に電話してどうしてこうなったのか聞いてみると、持ち主が語るには100ボルトを直結させてしまったとの事。

・・・は?100ボルト?直結?どーゆー事だ?どうなっているんだろうかとさらに聞くと、持ち主は語ってくれたそうです。

持ち主は複数のスピーカーを持っており、複数スピーカーの着脱にスピーカーコードの途中にコンセントコネクターを使っていた。どこにでも売っている100ボルトのコンセントコネクターです。いい工夫だと思います。コンセントのオスとメスを使って簡単にスピーカー交換できますから。


ですが、想定外のすんごい事をやってくれる人物がそこに居た。その家のメイドさんです。

メイドさんが居るという時点で実にブルジョアな香りが漂ってきますね(笑)。

メイドさんがオーディオルームの掃除をしようとして、単に間違えたのか、思いつきの好奇心を試そうとしたのかはよくわかりませんが、掃除機のコンセントと間違えてオーディオスピーカーのコンセントコネクターを100ボルトコンセントに差し込んでしまったらしいんです。

 

皆さん、どうなったと思います?50~60ヘルツの低音が出ると思いますか?

 

もう、すんごい大砲のような大音響が家の中に響き渡ったそうです。

技術屋の試算ですと1100ワットは出ていたんじゃないでしょうか、と言っていました。ちなみに、今私が作っているこのアンプは出力20ワットです。

音としての20ワットを全開で出力すると隣家から苦情が来ると思います。1100ワットって簡単に書いていますが、この数値からどれだけの音量が出ていたのか、想像するだけで恐ろしくなってしまいます。

さあ、それから大変です。故障の状況から考えた私の想像ですが、大音響を発するスピーカーは内部の保護回路が働いていますのでそのまま鳴り続け、保護回路が、

 

ドドゥゥゥゥゥウウウウウウン!!!!

 

壊れると、スピーカーに巻かれている駆動コイルが断線するまで本領発揮とばかりに大音響を発し続けたことでしょう。

 

そして、

 

ドウンガラガッシャーーーン!!

バラバラァァァーーーン!!!

 

心地よい沈黙・・・。

 

こうしてスピーカーはお亡くなりになってしまいました。

 

持ち主が言うには、その後で警察は来るわ、消防は来るわ、市役所の聞き取りはあるわで、エライ騒ぎになったと笑っておられたとの事です。

笑い事ではないんですよ、旦那。何とも豪気な方です(笑)。

 

しばかり、話題が逸れてしまいました。アンプの中にもフェールセーフ機構を採り入れながら少しずつ仕上げていきます。1基盤完成するたびに正常な動作が行われるかをチェックしていきます。


このシステムは交流100ボルトを直流の±15ボルトに降圧して増幅回路に印加します。

今回使用したデバイスはいきなり±15ボルトをかけないとIC内部のプロテクタが作動し、正常に動作してくれません。音が出ないという事です。
よって、アナログ的なテスト調整法である『恐る恐る電圧を加えていって大丈夫かなー方式』は使えないんです。

 

私は、回路の誤配線や部品の誤接続によって回路を壊してしまう事があるので、いきなり正規の電圧を掛けるというのに躊躇を感じます。

とはいっても、このICチップの仕様ですからどうしようもないですね。ですから、あきらめて一発勝負します。

 

うして、IR社の開発者は機器の製作者が一発勝負せざるを得ないような回路構成をとったんでしょうか?楽に製作することができればいいのにと思うのですが、何か他の意図があるのでしょうか?

 

開発者の意図を考えてみると、こういうことではないだろうかと思います。

アンプ一般に言えることですが、故障や過大入力に対しスピーカーの保護を考える、と先ほど私は述べました。

アンプの製作において、スピーカーの保護は本当に大事なことなんです。このスピーカー保護の方法として以前にリレーを使った遅延回路の話をした事があります。(詳細はこちら。「アンプを修理してみた」参照。)

このリレーですが、アンプにははずせない回路構成のひとつで今回もこのアンプ製作時に組み込みを予定しており、回路図まで作って組み込みを予定していました。しかし、このICチップのプロテクタ機構の性質を考えてみると、リレー回路はいらないなという事に気が付きました。

ICチップのデータシートをネットから取り寄せて読んでみると、それとなく行間にではありますが、このIR社のデバイスはノイズを極力減少させる事を目的として、正常な動作条件を狭くしているという事が書かれてあります。

動作条件を狭くすれば、設計や製作はクリティカルな仕様になりますが、使い勝手は良くなります。ちょっとした誤動作で簡単にプロテクト動作に入ります。

また、この動作はリレー回路が不要です。リレーは機械的な部品で動作を繰り返す為、数年で故障する性質を持っています。

アナログアンプでは必要ではありますが、部品自体も大きいですし本当なら付けたくないです。アンプ本体のカサも大きくなりますから。
このICについているプロテクタによって、小型化も可能になりますし、スピーカーを保護する事もできると考えられます。


うん、なるほど。そういうことか。開発者の設計思想に脱帽です。

 

うこうしながら、完成へと持っていきます。ある程度の形ができたらシステムが完動するかを確認します。この確認の瞬間がいちばん緊張しますし、楽しくもあります。

 

入力正弦波の電圧・電流値・周波数を決め正弦波を出力すると・・・ちゃんと出ました!よかった!

今回は増幅回路基盤の形が異なっていますので、それが原因で左右において異なる波形になっている可能性もあります。そこで、可聴周波数の正弦波を入力して左右の出力状態をオシロスコープで観察してみますが、今回使用したトランジスタ特有の波形(MOS−FETというトランジスタの一種)は左右とも一致した波形で出力されています。安定しているようです。

 

これなら、音楽信号を入れても大丈夫でしょう。CDプレーヤーを入力端子につないでスピーカーを出力端子につなぎ、音楽を再生してみます。

いい感じで鳴ります!第1印象ですが、クリアーなサウンドという感じを受けました。アナログアンプですと無演奏時、つまり無入力信号時でもかすかなノイズが聞こえるのですがそれがまったく聞こえません。

まだ、言いたい事は沢山あるのですが、このくらいにしておきましょう。今回は、前回小言アップとの間隔が開きすぎた為、多く書き過ぎました。

 

のアンプの検証に関しては、次回、「わが弟の遠慮なき検証篇」で行いたいと思います。私の弟が遠慮ない意見を行ってくれると思います。それに対して、毒づく私の姿も書けると思います。

では、今回はこれで。

 

 

アナログアンプサンスイ製AU-α607と共に
ただいま、検証中・・・。

 

 

 

 

 

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